東方紅魔郷 〜 the Embodiment of Scarlet Devil. - 0 - 幻想郷は、予想以上に騒がしい日々をおくっていた。 謎の来訪者に、夏の亡霊も戸惑ってるかの様に見えた。 そんな全てが普通な夏。 辺境は紅色の幻想に包まれた。 - 1 - ここは東の国の人里離れた山の中。 博麗(はくれい)神社は、そんな辺境にあった。 この山は、元々は人間は棲んでいない、今も多くは決して足を踏み入 れない場所で、人々には幻想郷と呼ばれていた。 幻想郷は、今も相変わらず人間以外の生き物と、ほんの少しの人間が 自由に闊歩していたのだった。 人々は文明開化に盲信した、人間は生活から闇の部分を積極的に排除 しようとしていた。 実はそれは、宵闇に棲む生き物にとっても、人間との干渉もなくお互 いに気楽な環境だったのだった。 そして、ある夏の日、音も無く、不穏な妖霧が幻想郷を包み始めたの である。 それは、まるで幻想郷が日の光を嫌っているように見えたのだった。 - 2 - 博麗神社の巫女、博麗霊夢(はくれいれいむ)はおおよそ平穏な日々 を送っていた。 滅多に参拝客が訪れないこの神社は、退屈だったり退屈じゃなかった りして、楽しく暮らしているようである。 そんな夏の日、霊夢は少しばかり退屈以外していた。 霊夢「もー、なんなのかしら、 日が当たらないと天気が晴れないじゃない」 このままでは、霧は神社を越え、人里に下りていってしまう。 幻想郷が人々の生活に干渉してしまうことは、幻想郷も人の手によっ て排除されてしまうだろう。 霊夢「こうなったら、原因を突き止めるのが巫女の仕事(なのか?) なんとなく、あっちの裏の湖が怪しいから、出かけてみよう!」 あたりは一面の妖霧。 勘の鋭い少女は、直感を頼りに湖の方向へ出発した。 - 3 - 数少ない森の住人である普通の少女、霧雨 魔理沙(きりさめまりさ)は、 普通に空を飛んでいた。 いつのまにか、霧で湖の全体が見渡せなくなっていたことに気づくと、 勘の普通な少女は、湖に浮かぶ島に何かがあるのでは?と思ったのだった。 魔理沙「普通、人間だって水のあるところに集落を造るしな」 化け物も水がないと生きてけないのだろうと、実に人間らしい考え方である。 魔理沙「そろそろ、あいつが動き出しそうだから、ちょっと見に行くか」 少女は、何かめぼしい物が無いか探しに行くかのように出発した。 むしろ探しに行ったのだった。 - 4 - 湖は、一面妖霧に包まれていた。 普通の人間は30分はもつ程度の妖気だったが、普通じゃない人もやはり 30分程度はもつようだった。 妖霧の中心地は、昼は常にぼんやり明るく、夜は月明かりでぼんやり明る かった。 霧の中から見る満月はぼやけて数倍ににも膨れて見えるのだった。 もしこの霧が人間の仕業だとすると、ベラドンナの花でもかじった人間で あることは容易に想像できる。 中心地には島があり、そこには人気を嫌った、とてもじゃないけど人間の 住めないようなところに、窓の少ない洋館が存在した。 昼も夜も無い館に、「彼女」は、いた。